● 「光散乱基礎講座『静的光散乱法』」佐藤 尚弘先生
A.私もそうかなと想像しているが、ダイレクトな証拠はいまのところない。
先ずは、dn/dcを測ってみようかと思っている。もしそうだったら、水が膨潤して中に入っていれば内部濃度も下がるし、dn/dcの値も小さくなり、よけいに分子量も高くなる方向なので、そうなれば期待通りとなる。
ただし、ポリスチレンラテックス粒子の水中でのRHは、乾燥状態の電顕の値とよく一致することが多いので、必ずしも膨潤していないことを示唆している。
A.CONTINから求められた緩和時間分布は、モル分率、重量分率、体積分率のいずれでもなく、重量分率にモル質量をかけた重率(z分率と呼ばれる)がかかっている。さらに、散乱角により大きく依存する(第27回散乱研究会 動的光散乱の基礎にて詳しく解説している)。(ただし、高角では粒子内干渉効果が働くので、サイズの大きい成分の重率はz分率より小さくなる。)
今回示したすべてのデータは、分布がかなり狭い理想的に近いサンプルを用いているので、RHは緩和時間分布で平均した値だが、ピーク値より計算したRHとほぼ一致すると思われる。
サイズの大きいものが散乱能が強く、強調されていると思った方が良い。
小粒子と大粒子の2ピークが得られたとき、大粒子のピークが大きくても、重量分率ではわずか数%と少ないことも往々にしてありうることには気を付ける必要がある。たとえば、大粒子のピーク面積比が90%でも、モル質量が100倍大きければ、重量分率は0.9%しか存在しない。同じく、第27回散乱研究会 動的光散乱の基礎にて詳しく解説している。
A.粒子内干渉効果は、粒子散乱関数を使って表現することができる。球・棒・ガウス鎖・みみず鎖など、個々の粒子形状により粒子散乱関数の具体的な表式が与えられている(詳細は「光散乱法の基礎と応用」のp42参照)。
粒子間干渉効果は、構造因子により表される。希薄系で散乱角がゼロの極限では、構造因子は1-A2Mc(A2:第二ビリアル係数;M:モル質量;c:溶質の質量濃度)で表され、c→0では構造因子は1となり粒子間干渉効果が消失する。第二ビリアル係数が正の場合は、2個に粒子間に斥力が働き(溶媒が良溶媒)、負の場合には引力が支配的(溶媒が貧溶媒)であることを示している。濃度が高くなると、構造因子はA2だけでは表されなくなる。3個以上の粒子が同時に相互作用する効果が重要になるからである。
A.溶媒が水の場合、昔から光散乱測定が難しいことが知られている。
何故かというと、疎水性相互作用の働く高分子はちゃんと溶けない場合が多い。ポリアクリル酸の場合もカルボン酸が付いているので親水的だが、それ以外の部分の疎水的な部分の影響を受けることがある。
また、水は表面張力が大きいので、ゴミが除去されにくい。ゴミはポリマーに比べて大きいので強い散乱が生じるため動的光散乱・静的光散乱両方で悪影響を与えてしまう。
最近は、フィルターの性能が向上してきたので、うまく測定できるようになってきたようだが、ちょっと溶け残りがあるケースでは、角度依存性で低角で急に落ちる(強度が強くなる)と、角度ゼロに外挿したときマイナスになって解析できなくなる場合もあるので、やはり注意が必要である。
電解質高分子の場合、溶媒に純水を使っていると静的光散乱で正しい値は、まず求められない。
純水中で電荷をもっていると長距離で強い静電相互作用のため、光散乱が測定できる濃度範囲では粒子間の干渉効果が残っているため、正しい濃度外挿が行えない。
一般的には、純水に適当な量の低分子塩を加えることで、遮蔽効果により静電相互作用を弱めて、測定を可能にしている。
A.その通りで、良溶媒・貧溶媒の間の中間溶媒も存在する。
溶媒と溶質の親和性、専門的に言うと粒子間引力の強さは、連続的に変わっているので、良溶媒と貧溶媒にはっきりした境界があるとは言えない。
ポリマーの場合、第二ビリアル係数が1x10-4cm3g-2molよりも大きい場合は良溶媒、ゼロもしくはマイナスになっている場合を貧溶媒と便宜上呼んでいる。もちろんその中間もあるので、きれいに2つに分かれるわけではない。
A.Mwは、正しいdn/dcの値を使っていれば、溶媒に依らず正しい値が求められる。ただし、混合溶媒の場合は、選択吸着の効果(片方の溶媒成分が高分子に吸着する効果)が働くと正しい分子量が得られない。この場合、溶媒に対して透析した溶液に対するdn/dcの値を用いれば、正しい分子量が得られる。RHは各溶媒に対する粘性係数を用いれば正しい値が得られるが、溶質への水和などがある場合は、水和した溶質のRHが得られる。Rgは、溶媒に関わらず、原理的に正しい値が得られる。溶媒によって正しいRg、RHの値が違うのは、各溶媒による粒子の膨潤の仕方が違うためである。
A.吸収がそれほど強くない場合は、セル内の溶液中を通過する光路長とモル吸光係数を用いて補正することで、静的光散乱データを正しく解析することはできる。
ただし、光を吸収することで散乱体積内の溶液が加熱されたり、変性したりするので注意が必要。また、光を吸収する試料は蛍光を出す可能性がある。蛍光は入射光と波長が違うので、光学フィルターを使って蛍光を除去して静的光散乱測定を行うことができる。
もっと強くなると散乱光が出てこなくなるので、測定できなくなる。
動的光散乱法は、強度そのものではなく強度の時間変化を測定するため、ある程度の吸収があっても強度さえ得られれば測定は可能。
墨汁のように光が入らない系は十分な散乱光強度が得られないため測定は困難。セル壁面近傍で測定する際には、壁と溶液との流体力学相互作用が生じてくるので正確な測定ができなくなる場合がある。
成功している例として、第25回散乱研究会で講演された「顕微動的光散乱法による濃厚系の粒径分布計測」がある.本方式では,共焦点顕微鏡の光学系を活用して、非常に限定された狭い領域の散乱光を検出して動的光散乱を測定するものである.興味がある方は,その講演資料を参考にしてほしい。
A.標準物質であるトルエンの散乱光強度測定を行い、引き続き同じ条件で測定溶液の強度測定を行う。溶液とトルエンの強度比にトルエンのRayleigh比(たとえば、633 nmの波長の25℃での値は1.36×10-5cm-1)を掛ければ、測定溶液のRayleigh比が得られる。Rayleigh比の単位は長さの逆数(cm-1)。
A.散乱点から発した散乱光は球面波で、散乱点から離れるほど単位立体角当たりの散乱光は少なくなる(池に石を投げいれた場合も、着水点から離れるほど波が弱まる)。溶媒による吸収の効果ではない(溶媒による吸収がある場合には、その減衰を別途考慮して解析する必要がある;上述の溶媒に関する質問参照)。真空中でも生じる本質的な現象。
A.フローセルはサイズ排除クロマトグラフィーに接続するタイプだと思うが、回転半径Rgは光散乱では10nmを下回ると求まらないため、分子量の小さいサンプルについては、DLSでRHを求めて溶質のサイズの議論をする。
精度に関しては使用したことがないので詳細は不明だが問題ないのではないか。あえて問題があるとすると、溶媒系によっては、SECで最適な分解能がでる濃度領域では精度よくDLS測定が行えない場合がある。
A.溶媒と高分子の親和性を一番ダイレクトに反映するのは第二ビリアル係数である。
屈曲性高分子の場合は排除体積効果があるため良溶媒では膨らんでサイズが大きくなり、貧溶媒では縮んで小さくなるので、回転半径や流体力学的半径の溶媒による違いにより溶媒との親和性を判断できるが、剛直性高分子や低分子量の高分子は排除体積効果がほとんど働かないので、親和性が良くても悪くてもサイズは変わらず、RgやRHからは評価することは出来ない。高分子のサイズが小さい場合には、回転半径よりも流体力学的半径のほうが精度があるのでDLS測定のほうが良い(目安は、10 nm)。
A.“Rθ=KcM”の式でわかるとおり、分子量(M)の精度は濃度(c)の精度で決まる、濃度が1%の精度であれば分子量も1%の精度で求められることになる。
Rθ(レイリー比)などの誤差も加わるため、実際にはこれより誤差は大きくなることになる。
A.分子量が小さく、Rgが10nmを下回る試料に対しては回転半径は精度よく求められなくなるが、分子量と第二ビリアル係数は分子量が低くても測定は可能。Rθ=KcMの式より、Mとcは反比例の関係にあるので、低分子量試料の場合にはcを上げないと十分な散乱光強度が出ない。
A.はい、溶媒分子より十分大きい溶質ならば、RHは測定できるので、RH対Mのプロットを使って、溶質の分子形態の議論が行える。
A.沈降が起こるようなコロイド系の測定を行った経験はないが、十分攪拌して均一にしてから即座にSLS測定すれば、分子量測定は可能だと思われる。dn/dcが0.2cm3/gを超える場合は、Mie散乱の効果を考慮に入れないといけなくなるので、解析が難しくなる。dn/dcは溶質と溶媒の屈折率差に比例するので、屈折率の大きいポリスチレンラテックスを屈折率の低い水に分散した系では0.2を超える。
A.流動下での光散乱測定例を知らないが、いろいろと考慮しないといけない問題があると考えられる。引き伸ばされたポリマー鎖の配向方向と入射光方向が光散乱実験に影響するので、その効果を考慮に入れた解析が必要。流動下ではなく、静置下で棒状形態をとるポリマー等方溶液の場合は、棒の長さをLとすると(L=モノマーユニット長×重合度)、回転半径はLを12の平方根で割った値、流体力学的半径はL/2を軸比(Lを棒の太さで割った量)の自然対数で割った値となる。
A.高分子溶液に対して、通常のレオメーターから得られる動的弾性率と同じ物理量が得られるといわれている。通常のレオメーターよりも高周波域のデータが得られる。最近は、DNAやミオシンなどの生体高分子(集合体)などの測定が行われている。
A.質量分析では、サンプルをイオン化させる必要がある。タンパク質のように単分散試料の場合には、試料の一部がイオン化すれば正しい分子量が求まるが、分子量分布をもつ合成高分子の場合は、イオン化度が分子量に依存する可能性があり、その場合には正しい平均分子量が質量分析からは求まらない。SLSにはそのような問題は存在せずに絶対分子量が原理的に得られる。
A.粒子間に強い斥力相互作用が働く場合には、粒子間干渉効果によりI/I0・sinθが、角度とともに増加することがある。その場合も、適切に濃度外挿して無限希釈状態の散乱関数を求めると、粒子間干渉効果が消えて正常な角度依存性になり、正しく回転半径が求まる。
A.dn/dcの大きい溶媒、溶質を完全に溶かす良溶媒、光学精製(ごみを除去する作業)を行いやすくするために低粘性の溶媒を選択するのが良い。入射光を吸収したり蛍光を発する溶媒は避ける(そのような溶媒の光散乱への影響については上述の溶媒に関する質問参照)。
A.解離‐会合系では、濃度増加によりモル質量Mが増加する。式Kc/Rθ = 1/M + 2A2cからわかるように、解離-会合系で濃度増加により1/Mが減少すると、その効果はA2の過小評価をもたらす。真のA2が小さいのか、A2は正だが会合促進でA2が小さく見えるのかを判別するためには、広い濃度範囲でSLS測定を行う必要がある。一般に、後者の場合、低濃度域ではKc/Rθは濃度の減少関数なるが、高濃度域では(A2正のために)正の勾配に反転する。
A.分子量がMiの成分iと分子量がMj成分jの間の第二ビリアル係数をAijとすると、光散乱から求まる平均のA2はA2= ΣiΣjwiMiwjMjAijで与えられる(wi、wjは重量分率)。
A.テキストに示した冠球円筒のRHの式は任意の軸比について成立する。ただし、実際のポリマーでは、長くなると屈曲性の効果が表れるので、この表式からずれてくる。このずれは式の問題ではなく、モデルと現実鎖が合わなくなることによる。
A.屈曲性高分子鎖は通常ガウス鎖で表される。ガウス鎖はRH∝M1/2なので、低分子量域でのオリゴスチレンのRHはこの分子量依存性に従っていない。すなわち、この分子量域でのオリゴスチレンのRHをガウス鎖(屈曲性高分子の理論)では表せない。(屈曲性鎖の理論は冠球円筒理論とは重ならない。)
A.GPCは分子量の絶対測定法ではないので、研究対象としている高分子試料と同種の標準試料が入手できる場合には、それを用いて求めた校正曲線を用いれば、正しいモル質量が得られるが、そのような標準試料が入手できない場合には、たとえばポリスチレン換算分子量しか得られず、正しい分子キャラクタリゼーションは行えない。
A.キサンタンのX線による研究は、結晶構造解析でらせんピッチを見積もるのに用いているので、らせんピッチについて別の情報(たとえば、エネルギー計算による最安定構造の見積もり)があれば、DLS/SLSだけで議論できる。テキストに書いた条件であれば、固定角のELSZのみの実験で解析可能。
A.午前の部で、動的光散乱法も静的光散乱法同様に厳密には濃度ゼロに外挿しないと正しい流体力学径は求まらないといったと思うが、濃厚系の場合は厳密には正しい流体力学径は求まっていないと思っていただきたい。どの様な粘性係数を用いれば正しい流体力学径が求まるかとの質問だと思うが、厳密に言えば、粘度以外にも濃厚系の場合は粒子が動くとその近くの粒子も影響を受ける流体力学的相互作用と、浸透圧現象(良溶媒系では拡散は速くなり、貧溶媒系では遅くなる)という効果も効いてくるので、厳密に求めることは出来ない。簡単ではない。
実際に何とか評価するためには、何かの定数を一定にしないと流体力学径は求められないので、とりあえず溶媒粘度は一定にする。しかしながら佐藤先生の説明の通り、濃厚系では粒子-粒子相互作用があるので、それは理論的にある程度公式のように求められているので体積濃度を代入することでその効果はある程度見積もることはできる。
次に測定法だが、一般的なDLSを使うと拡散波分光法という方法となる。通常は単散乱を仮定したDLSの場合は相関関数は負の指数関数となるがその係数は「-τ」できいてくる指数関数となるが、拡散波分光の場合は同じく負の指数関数となるがその係数は「-√τ」に依存する指数関数となる。このため相関関数をLOGとると、単散乱の場合は直線になるが、多重散乱の場合は曲線になってくる。この曲がった時に拡散波分光の理論を適応しないと正しい流体力学径を算出できないし、その場合は平均粒径しか求められない。このため、低コヒーレンス動的光散乱法などを用いて、濃度が濃くても単散乱を取り出す事ができると、通常の動的光散乱の理論で解析できる。しかしながら、粒子-粒子相互作用はあるので、その項は加味して解析する必要がある。この理論に関しては「光散乱基礎と応用」でも解説している。
A.dn/dcは溶質の散乱能を表している。たとえば、dn/dcがゼロの場合、光は散乱せずに溶液中を透過する。すなわちこの場合は溶質に光散乱能がない。“Rθ=KcM”の式で、dn/dcの二乗がKの中に入っているので、同じRθを与える溶液でも、dn/dcが小さい試料ではMがより大きい。合成両親媒性高分子のDLSで得られた相関関数の緩和時間分布がふた山になるのは、花型セルと不定形の会合体が形成されていると考えられる。なぜそう考えるかというと、速い緩和成分の流体力学的半径が花型ミセルの理論に従うことが確認されたから。DLSの相関関数の緩和時間分布を計算して、そのピーク面積比からSLSのデータを二つに分けるので、ろ過で分けるわけではない。講演で述べた両親媒性のランダム・交互共重合体の場合も,緩和スペクトルは二山になるので分けている(講演では述べなかったかもしれないが)。
● 「⼆重らせん多糖類キサンタンの熱変性・再性に伴う構造変化」松田 靖弘先生
A.とりあえずデータを解析して、分子量、回転半径を求めます。横軸に溶出時間、縦軸に得られた分子量の対数を取ったグラフを描くと単調減少の関係が得られます。濃度(シグナルの強度)不足場合、綺麗に減少せずにデータ点がバラバラになるので、濃度(強度)不足であると分かると思います。回転半径は、横軸に分子量の対数、縦軸に回転半径の対数を取ったグラフを描くと単調増加の関係が得られ、濃度(強度)不足の場合には同様にデータ点がバラバラになります。ただし、静的光散乱を使う限り、回転半径は10 nm以下では濃度を上げても原理上正確に求まりません。
濃度(強度)不足ではなく、SECの分離不良の場合、溶出時間-分子量の対数や分子量の対数-回転半径の対数のグラフが単調減少(増加)せずに途中で曲がってしまうので、データがばらついているか、曲がっているかで区別できます。
A.(分子内の排除体積効果があるのでこれだけでは正確には求められませんが)分布がある試料で、SEC-MALSを測定できるのであれば、横軸に分子量に対し縦軸に回転半径をとって、回転半径の分子量依存性を評価する、あるいは今回話をしませんでしたがMALSの代わりに粘度計を検出器に使用すれば固有粘度の分子量依存性が求められて持続長が見積もることができます。
ポリスチレンのような屈曲性高分子では持続長は数nm、セルロース誘導体やポリ(n-ヘキシルイソシアナート)のようにやや硬い半屈曲性高分子では十から数十nm、二重らせんのDNAでは60 nm程度、講演で取り上げたようならせん多糖類のような剛直鎖では100 nmを超えます。
A.異なる濃度で十分に遅いずり速度で粘度を求め、濃度ゼロに外挿することで固有粘度と言う値が求まります。異なる分子量の試料に対して固有粘度を求めると、ガウス鎖では固有粘度は分子量の0.5乗、棒状分子では1乗に比例するので、分子の折れやすさが分かります。ある程度剛直な高分子の場合、比較的低分子量では1乗に近い分子量依存性を示しますが、高分子量になると分子が曲がって来るので0.5乗に近い分子量依存性へと変化していきます。適当なモデルを与えて固有粘度の分子量依存性を計算することで、定量的な折れやすさ(持続長)を求めることができます。
● 「光散乱を利用した高分子の結晶化と相分離挙動の追跡」斎藤 拓先生
A.全ての系に当てはまるわけではありませんが、液々相分離により形成された構造に対してはかなり当てはまります。
海島構造で島相の量が非常に少ない場合には希薄溶液に利用されるギニエ式が使われることもあります。ピーク分離用のバックグラウンドにも使われることがありますが、いずれの場合にも散乱プロファイルをフィッティングして判断する必要があります。
A.まだ推察の段階ですが、密度ゆらぎの波の振幅が相分離の進行に伴い大きくなり、PC同士がぶつかり合うことでPCの結晶核が形成され、結晶化が誘起されていると考えています。化を誘起しているのではないかと考えている。
A.まだ推察の段階ですが、密度ゆらぎの波の振幅が相分離の進行に伴い大きくなり、PC同士がぶつかり合うことでPCの結晶核が形成され、結晶化が誘起されていると考えています。
A.ポリマー溶液系における相分離に関しても検出できます。
溶液系においても、一般には高分子-高分子系と散乱パターンに大きな違いはありません。
A.広いθ領域で散乱強度を求めないと、小さい構造から大きな構造へと変化する過程の検出に対応できません。
スライド3-16の結果に対してはデバイビュフェ式を適用しています。
A.透明性が良く、光が透過できる試料であれば測定できます。
A.ファイバーの曲面で照射した光がいろいろな方向に屈折してしまうため、一般的な方法では測定できません。
ただし、ファイバーと同じ屈折率の溶媒に浸けて、さらにビームを絞れば原理的には測定可能になるはずです。
A.小角光散乱でも、構造に対して原理的には小角X線散乱と同じような議論ができます。
例えば、小角X線散乱では散乱強度の積分値により「電子密度の差×結晶化度」を求められるように、Hv光散乱の散乱強度の積分値により「光学異方性×結晶化度」、Vv散乱では「屈折率の差(相分離の尺度)×組成」を求めることができ、同じような議論ができます。
A.光散乱の測定には適切な厚みの試料が必要になります。
透明性が高い場合はよいのですが、散乱体の量が多くなると多重散乱が出てしまい、散乱強度や散乱プロファイルに対する適切な評価ができなくなります。それを防ぐために、50~200μmくらいの厚みが適切であると考えています。
A.正しいです。相分離の進行に伴い波の振幅が上下に方向に大きくなります。
A.そのとおりです。ある程度の結晶化が進行すると分子鎖が動けなくなりますのでスピノーダルの成長も停止します。
後期過程よりも前で結晶化が生じていると考えています。核形成成長による結晶化もあり得ます。
A.1.領域Iでは散乱強度および応力の増加が著しく、領域IIでは散乱強度と応力変化が小さい、という違いから領域を区切っています。IIとIIIは伸張結晶化により応力の立ち上がる位置で区切っています。
2.HNBRでしか評価していませんが伸張結晶化が生じるものであれば原理的には同じような結果が得られると考えています。
A.・レオメーターメーターの小角光散乱の装置を見たことがないのでわかりません。
・測定条件にもよりますが、0.1秒以下の間隔で測定できるはずです。
・いろいろなケースがありますので、一概には答えられません。
● 「バイオマテリアル応用を目指した刺激応答性微粒子の調製」菊池 明彦先生
A.原理的には戻ります。
基本的には形の変化は水中で見ているが、水中でコアのガラス転移温度以上の状態まで持って行っていれば、基本的には球状には戻ってきます。(その方が界面自由エネルギーが小さくなって安定になるため。)
ただ時間のところに関しては、細かいところを全部は追っていないので、どう変化しているかについては現時点ではお答えすることは出来ません。
A.細胞を培養後、24h経過後に取り込み実験を行っているため、培養細胞は37℃では増殖が起こっている可能性は高いと考えられます。しかし、粒子の取り込みを行っている時間で大幅な細胞増殖が起こるような細胞濃度で実験をしていない(細胞の密度が低い状態で培養)ため、増殖が取り込みに与える影響は少ないと考えています。
A.私たちの粒子はサブミクロンサイズのものを細胞実験に使っているので位相差顕微鏡下でも確認ができます。ナノ粒子の場合はTEM、AFMなども適用できると思います。散乱研究会当日に佐藤先生から紹介された「光散乱法の基礎と応用」(講談社)には、SEC-MALSなどもボトルブラシ型ポリマーの解析に使えることが述べられていますので、これらをお考えいただくと良いのではないでしょうか。
● 「散乱法を用いたポリロタキサンと環動高分子の構造解析」伊藤 耕三先生
A.まず相溶性です。混ざりにくい材料なので、どのように混ぜるかが重要。
もう一つは架橋点の数が重要なファクターである。本当は環を減らした方が良いが、そのような材料は量産化されていないので、どうやって動かすか、動く部分を作るかというところが重要。架橋密度を調整して最適化することで性能を向上させられることがわかっている。
A.シクロデキストリン、PEG、末端のアダマッタン基も安全な物質なので、最初は医療分野で使ってもらいたいと考えていた。しかし、なかなか生体で使うにはバリアも高いし非常にコストがかかるので、今は工業分野でいろいろな応用が進んでいるが、将来的には生体系でも利用してもらいたい。
A.これは周期構造ではなく、分子の形態に起因する形状因子だと思っている。
詳細はまだ明らかになっていないが、5%しか含まれない成分が周期構造を形成しているとは考えにくい。
ポリロタキサンが凝集しているのではなく、分子分散していることを反映していると考えている。
A.環状分子のスライドの速さよりも引っ張る速度が速くなると、架橋点が動けなくなり、化学架橋のように振る舞うことはあります。
A.よくあります。いかにしてよく分子分散させるかが一番重要で、そのための処方箋もいろいろ明らかになっている。
普通のポリマーより混ざりにくいので、どうやって混ぜるかが、このような材料を用いるときに重要である。
A.PLAとポリロタキサンを架橋している。単にPLAとポリロタキサンを混合しただけでは、このような特性が現れないことが明らかになっている。
A.現在のポリロタキサンの合成法で、もっとも収率が高い包接率が25%である。
A.アドバンストソフトマテリアルズ株式会社(ASM)から購入可能。
A.まず伸びが相当違う。柔らかい高分子でつくると伸びるようになる。
弾性率は何で決まっているかというと、架橋点間距離の分子の数などが効いてくるので、もしゴム弾性にならないような硬い高分子で作ったらまったく伸びないガチガチの物ができる。ゴム弾性の理論が使えるのはあくまでやわらかい高分子で架橋したものと考えた方が良い。
● 『光散乱法の基礎と応用』および光散乱全般、講師先生方・世話人・大塚電子
A.屈曲性高分子の場合、分子量が高いと高分子鎖の内部運動がΓに反映されて、Γ/q2が一定とならない。この場合、Γ/q2をq→0にすると内部モードに寄与が消えて、正しいRHが求められる。SLSの場合の対応する効果は、Kc/Rθにq2依存性が出ることで、この依存性から回転半径が求まる。
A.散乱によって波長変化が発生しないか,ぼぼ無視できるほど小さい準弾性散乱現象に対して、散乱理論が構築されている。したがって、実測値と理論を相互比較する通常の評価法では、この過程が成立する範囲の入射光パワーで実験を行なう必要がある。入射光パワーを増加させると、蛍光の他に、波長変化を伴うラマン散乱光が発生し、異なる波長にスペクトルピークを発現させる。また、スリガラスにレーザー光を照射した場合には、空間的にスペックルパターンが発生するものの波長が変化することはない。
A.ランダムコイル状の屈曲性高分子が並進運動するときには、いわゆる素抜けの効果により、コイル内部に存在する溶媒も高分子鎖と一体となって運動する。そのためRHはそのように高分子鎖と溶媒が一体となった状態のサイズとなる。ポリイオンも同様で、コイル内部の対イオンを含む溶媒と一体となったもののRHとなる。
A.テキストに書いたように、球状粒子の場合の濃度補正項は、1 + 4.5φ(φ:粒子の体積分率)となる。屈曲性高分子の場合には、大雑把に言うと、このφをφN01/2で置き換えた補正因子となり(N0:重合度)、球状粒子よりも濃度補正因子は大きくなる。N0 = 100の場合には、φを1/10にして初めて球状粒子の場合と同じ補正因子となる。
A.光とX線・中性子線とは波長が非常に違うので、見ているスケールが違う。動的光散乱では、たとえば高分子全体の運動を見ているので、高分子鎖全体のサイズを表すRHが求まるが、X線・中性子線で同じ情報を得ることは難しい。X線・中性子線は波長が短く、より局所的な構造を見ているので、対応する局所構造のダイナミクスを調べるにはX線・中性子線散乱法が利用できる。
A.「光散乱の基礎と応用」のp.35「発展1.4 分極率と屈折率との関係」を参照されたい。
A.不均一な場合にアブノーマルバタフライパターンが見られることは、実験と理論の両面で明らかになっている。Shibayama, M.; Kawakubo, K.; Ikkai, F.; Imai, M. Macromolecules
1998, 31, 2586.やOnuki, A. J. Phys. II 1992, 2, 45.を参照して下さい。
簡単にいうと、ゲル(架橋された網目)には網目の疎密が存在し、変形によって疎な部分はより疎に、密な部分はそのまま移動することに由来します。延伸の結果として、延伸方向では疎密の差が大きくなり、垂直方向では差が小さくなることにより、延伸方向に散乱が強く現れるます。これを、アブノーマルバタフライパターンと呼んでいます。
A.大塚電子製光散乱製品の粒子径分布解析法の特徴について解説します。
■Contin法:Steven Provencher氏によって考案された逆ラプラス変換法を用いた解析法
特徴:分解能が高く、分布幅の狭い粒子も広い粒子にも適している。
用途:一般的なサンプルに適している。学術的な認知度が高い。
■Marquardt法:非線形最小二乗法の修正Marquardt法を使用した解析法
特徴:分布幅が比較的広く、連続性のあるサンプルに適している。
用途:粉体・エマルション・セラミックなどの分散状態の評価など多くの用途に適している。
■NNLS法:非負拘束付最小二乗法(Non-Negative Least Squares)を使用した解析法
特徴:分布の狭い粒子や、その混合系に適している。ピーク位置検出に適している。
用途:標準ラテックスのように粒子径が揃った粒子や、その混合系の評価などに適している。
■Unimodal(Cumulant)法:キュムラント解析結果から単一正規分布を求める解析法
特徴:単一正規分布として算出される。
用途:ピーク位置とピーク幅を評価する用途(品質管理など)に適している。