● 「光散乱基礎講座『動的光散乱法』」柴山 充弘先生
A.原理的には可能です。しかし、モノマー濃度が高い場合や、生成するポリマーの分子量が大きいと、重合過程ですぐにC*濃度(高分子鎖が互いに接する濃度)に達し、それ以降では、準希薄溶液となってしまいます。こうなると、DLSによる観測対象は分子全体ではなく、準希薄溶液中のブロブになるため、分子全体の大きさをで測定することは困難になります。
A.まず、ご質問の確認をさせてください。「散乱帯」ではなく「散乱体」でしょうか。また、「散乱光が波長に依存する」とは「散乱光強度」という質問でしょうか。確かに、散乱体のサイズが十分小さい(光の波長の1/10以下)とき、レイリー散乱となり、散乱強度は波長に依存します(レイリーの4乗則)。「散乱体」の大きさが波長程度あるいはそれ以上になると、ミー散乱になりますが、やはり散乱強度は波長に依存するし、さらに散乱角にも大きく依存するようになります。
A.まず、「ソルベントショック」とは、「インキを溶剤で急激に希釈する場合に起きる顔料の凝集・析出などの現象」と理解してよろしいでしょうか。急激に溶質粒子のサイズが変化するようなときにDLS測定が可能かどうか、というご質問としてお答えします。答えは「可能」です。例として、Onoda et al., Nature Communications, 2017, 8, 15862をご紹介します。2秒間隔でのDLS測定で100倍ほどのサイズ変化を捉えています。
A.粒径が波長に近づいているので構造色が現れたからです。さらに粒径が大きくなると青から次第に赤みがかった色、さらには乳白色に見えてきます。
A.ナノシートとは固体試料でしょうか。固体の場合には、「動く」成分がないのでDLSでは測定出来ません。静的光散乱が適しています。第29回散乱研究会での、佐藤先生の講演テキストをご覧ください。
A.デプス方向での緩和速度変化、それを換算した粒径分布が得られます。例として、Dynamic Light Scattering Microscope: Accessing Opaque Samples with High Spatial Resolution, Opt. Lett., 2013, 21, 20260-20267,をご紹介します。
A.まず、(a)で試料位置をずらしながらDLS測定をします。そのときの散乱強度<I>Tを「位置」の関数としてプロットします(位置はランダムで結構です)。一方で、(b)DLS測定で得られる相関関数のそれぞれからみかけの拡散係数DAを評価します。(c)そのDAを<I>Tに対してプロットすることにより、ゆらぎの成分<IF>Tが評価できます。さらに、(d) <I>T/DAを<I>Tに対してプロットすることにより、その傾きや切片から、<IF>Tと真の拡散係数Dが評価できます。詳しくは、「散乱法の基礎と応用」(柴山ら編、講談社、2014)をご覧ください。
A.架橋剤は消費されますが、一方でポリマー(ゲル)が生成します。モノマーと架橋剤の混合溶液から、ポリマー溶液(ゲル)に変わっていくため、厳密には、高分子の生成により高密度化し、屈折率も大きくなります。しかし、バルク重合と違い、ゲルの場合、溶質であるポリマーの濃度は高々10%程度であり、系内には常に一定の溶媒存在するので、屈折率変化は無視していいと考えています。
A.Q&Aコーナーでもご説明しましたが、DLSでは相互拡散、NMRでは自己拡散を観ているので濃度依存性は逆になります。
A.Dと粘度はストークス・アインシュタイン式で結ばれているので、一方がわからないと他方はわかりません。よって、一般には、既知の粒子サイズのプローブ粒子を使ってDLS実験をおこない局所粘度を求める、あるいは既知の溶媒粘度(希釈極限)を使って粒径を求める、という手法が採られます。
A.違います。蛍光相関分光法においても顕微鏡を使いますが、蛍光相関分光法では蛍光物質をつけたサンプルの微小範囲に光を当て、顕微鏡視野内で蛍光強度のゆらぎ(ラベルした粒子もしくは分子の増減)を測定するのに対し、顕微DLSでは「散乱光」を測定します。前者がラベルした粒子、後者が散乱する粒子全てが対象となります。
A.違うとおもいます。ホームページなどで公開されている資料では、「レーザー回折法とは、分散された粒子試料をレーザー光が通過する際に散乱する光の強度の角度変化を測定することで粒度分布を求める手法」、とあります。この点においては、静的散乱法(散乱強度を散乱角の関数として測定し、それから散乱体の形状や数濃度などを評価する手法)と同じですが、「レーザー回折法では体積相当球モデルを想定して光散乱のMie理論により粒度分布を計算する」点が異なります。
A.高濃度でDLS測定では、散乱角の小さな散乱光を用いるのではなく、散乱角180度あるいはそれに近い角度の散乱光を用いるため、試料中を通る光路が非常に小さくて済みます。そのため多重散乱を極力防ぐことが出来ます。
A.多くの教科書や参考書が取り扱っているのは希薄系なので、「屈折率は溶媒の屈折率を用いる」とあります。しかし、有限濃度、とくに高濃度系では溶媒ではなく溶液の屈折率を使う必要があります。
A.ご指摘の通り、壁付近では壁と観測対象の粒子との相互作用が問題となります。引力系の場合、結果的に、見かけの粒径が大きくなる、ということになります。
A.どの角度が最適とは一概には言えませんが、大きな粒子に対しては小角、小さな粒子に対しては広角がいい、と言えます。
A.気泡由来の散乱を避けるには、あらかじめ脱泡をする必要があるかと思います。測定前の試料溶液に真空ポンプをつなぎ、少し減圧すると、溶存していたガスが抜けて脱泡できます。
A.昨年、第29回散乱研究会にて、佐藤先生が1点の散乱角で粒径評価をおこなう方法を説明されています。そちらをご覧ください。
A.原理的には、キュムラント法でもCONTIN法でも分離可能です。しかし、多様分布している粒径サイズ間に大きな違い(例えば一桁毎)がある必要があります。散乱角については、小角であれば大きな粒子、広角であれば小さな粒子が対象となります。
A.一概には言えません。標準試料を測り比較するなどが必要かと思います。「τが大きいところでフィッティングが全く合っていないものが出てきてしまう」場合、異なる粒子サイズの成分があると考えていいと思います。その場合には、キュムラント法かCONTIN法で解析することをお勧めします。
A.原則、DLSでは「個数分布」は得られません。講義でご説明した通り、粒子サイズの重み(より正確にはそれぞれの粒子の散乱強度という重み)がついた「度数」分布を測定しています。
A.散乱強度はどちらの場合でも振動します。ただ、粒径が大きく違うので対応する観測角度領域が違い、結果として振動する領域としない領域に見えるだけです。)
A.スライド26に、相関関数と分布関数の関係(ラプラス変換)を示していますが、式では、きざみ幅はd Γとしています。しかし、実際は、同じスライド中の図にもあるように、きざみ幅はd lnΓもしくは、はΓ-1の分解能(きざみ幅)はd lnτで表されるべきもの(何桁にもわたるもの)です。よって、「きざみ幅」は対象とする時間スケールによって変化するので、一義的には定義できません。
A.w/o(water in oil)エマルションですね。この場合、媒体がオイルなので、入力値は油の粘度、屈折率になります。
A.高粘度になる場合、粘度の入力値は乳化物のそれにしないと正しい値はでません。o/wエマルション系ですが、実例を紹介します。Kawada et al., Structure and Rheology of a Self-Standing Nanoemulsion, Langmuir, 2010, 26, 2430-2437.
A.まず、スラリーは透明でしょうか。不透明ならDLSは無理です。透明でも、ゲル状異物のサイズが大きい場合、ゲル状異物とナノサイズの粒子を両方DLSで観測するのは難しく、ゲル状異物が優先的に観測されてしまうと思います。
A.実験の条件情報が不足している(D50%とは?、希釈濃度は同じ、違う?)ので詳しくコメント出来ません。ただ、DLSにしてもレーザー回折法にしても、160nm~170nmと130nm~140nmでは有意な差とは言えません。また、「そこまでブロード」の意味がわかりません。
A.ゲルの網目の大きさに関する情報はDLSで得られます。ゲルの膨潤・収縮などは巨視的な変化なので、直接、DLSからは評価できませんが、膨潤・収縮とゲルの網目の大きさは関係しているので、両方を測定することで、ゲルの特性がわかります。
A.「問題無く」とは言えませんが、測定可能です。顕微DLSの場合、吸光度情報も実験からえられます。詳しくは、Dynamic Light Scattering Microscope: Accessing Opaque Samples with High Spatial Resolution, Opt. Lett., 2013, 21, 20260-20267,をご紹介します。
A.会場でもお答えしましたが、金ナノ粒子には購入先やロットにより多少、屈折率に差があります。今回、異なる屈折率の金ナノ粒子を用いた実験例を紹介したため、このような2つの異なる値を掲載しました。間違いではありません。
● 「光散乱法の基礎と応用/散乱全般」
A.光散乱法は散乱体の大きさや形状についての情報は与えますが、性状については無理です。結晶とアモルファスなら、広角X線回折法などを併用すれば可能かもしれません。
A.散乱実験においては、「散乱光」を測定するので、物質中を光が透過する必要があります。用いる光と補色関係にある顔料(赤色レーザーに対しては緑など)については実験は難しいと思います。「補色」については、ウィキペディアなどで御確認いただけます。
A.Q&Aコーナーでも佐藤先生が説明されましたが、ラテックス、エマルジョン、コロイド、ディスパージョンには、あまり大きな違いはなく使われています。しかし、正確には、ラテックスは「水中に重合体の微粒子が安定に分散した系(乳濁液)」であり、エマルション(エマルジョン)は「分散質・分散媒が共に液体である分散系溶液」、コロイドは「分子が集まって、普通の顕微鏡で見えない程度の粒となって、浮きただようような状態」をいい、ディスパージョンは「分散系、分散化」などを意味する英語で、「分散系、分散化」を総称する語です。
A.Q&Aコーナーでも佐藤先生が説明しましたが、粒径分布には何桁にも渡るものが多いので自然対数表記が便利です。また、粒径分布にガウス分布を用いるとすると、それは単なる仮定です。より一般的には、対数正規分布などが使われます。高分子の重合度分布も対数正規分布になることが多いです。
A.解析が正しく出来ているかどうかを判断するのは容易ではありません。キュムラント法解析やCONTON解析などで、その残差を丁寧に評価し、判定する必要があります。
A.異なる濃度点で一連の測定をおこない、ゼロ濃度外挿します。このとき、有限濃度での測定値とゼロ濃度外挿値に大差なければ、実験に用いた有限濃度は「十分希薄」といえます。濃度を高くしたい場合でも、ゼロ濃度外挿値を知っておくと有意です。
A.2つ理由があります。一つは、装置の可干渉性の程度が悪い(ビーム径が大きい、レーザーの可干渉性が悪いなどの理由)ため、二次の時間相関関数の始点は2より大きく低下します。もう一つは、ゲルなど非エルゴード系を測定した場合、ヘテロダイン成分が混在するので、同じく始点は2より低下します。
A.サイズ(1~30nm程度)はともかく、非常に希薄な条件(10ppm)ではDLSは難しいとおもいます。
A.大塚電子製光散乱製品の粒子径分布解析法の特徴について解説します。
■Contin法:Steven Provencher氏によって考案された逆ラプラス変換法を用いた解析法
特徴:分解能が高く、分布幅の狭い粒子も広い粒子にも適している。
用途:一般的なサンプルに適している。学術的な認知度が高い。
■Marquardt法:非線形最小二乗法の修正Marquardt法を使用した解析法
特徴:分布幅が比較的広く、連続性のあるサンプルに適している。
用途:粉体・エマルション・セラミックなどの分散状態の評価など多くの用途に適している。
■NNLS法:非負拘束付最小二乗法(Non-Negative Least Squares)を使用した解析法
特徴:分布の狭い粒子や、その混合系に適している。ピーク位置検出に適している。
用途:標準ラテックスのように粒子径が揃った粒子や、その混合系の評価などに適している。
■Unimodal(Cumulant)法:キュムラント解析結果から単一正規分布を求める解析法
特徴:単一正規分布として算出される。
用途:ピーク位置とピーク幅を評価する用途(品質管理など)に適している。
● 「超音波散乱法による微粒子分散系の構造とダイナミクス」則末 智久先生
A.はい得られます。ただし、20MHzの縦波超音波の波長は、光よりも100倍ほど長いので、この周波数ではナノ粒子の形状解析は難しく、数十ミクロンが最適な解析対象となります。
A.現状困難と考えられます。大きなコア部の情報で小さいシリカ粒子の情報が隠れてしまうためです。液滴を基盤表面に固定させて表面を見る特殊なセットアップを構築すれば可能かもしれません。
A.サイバーロジック社製のWave2000というFDTD型の市販のシミュレーションソフトウェアを使っています。二次元ですが、弾性体中の縦波と横波の伝搬を考慮した優秀なシステムであると思います。
A.縦波の減衰法を使っていますが、弾性体を伝搬するときに縦波に加えて一部が横波にモード変換される原理を使っています。なお、固体材料では、縦波の超音波センサーではなく、横波の専用センサーを用いることで、純粋な横波解析も行えます。
A.非破壊検査や医療診断では低エネルギー超音波が使われています。本研究ではさらに低いエネルギーの超音波を使っていルため、凝集体はほぐれないようです。
A.可能ですが、やや難しいです。粘度が高いと超音波の減衰が大きためです。その場合には、セル長を短くしたり、励振エネルギーを大きくしたり、減衰の小さな低い周波数の超音波を使います。
A.はい可能です。例えば、"Determination of Particle Size Distribution and Elastic Properties of Silica Microcapsules by Means of Ultrasound Spectroscopy", T. N. Tran, D. Shibata, T. Norisuye, K. Sugita, H. Nakanishi, and Q. Tran-Cong-Miyata, Jpn. J. Appl. Phys., 55, 07KC01 (6 pages) (2016.5)をご覧ください。
A.粒子がなく溶媒だけでも粘性のエネルギー減衰(実数部が弾性率)があります。粒子の素材のみで板を作成すればそれも固有のエネルギー減衰があります。粒子を液体に分散させると、粒子成分のエネルギー減衰と、液体のエネルギー減衰が生じますが、さらに加えて、粒子が有限の大きさで形をなしていることによる散乱減衰があることを述べました。弾性率は位相部から得られますが、溶媒の縦波弾性と、粒子の縦波弾性と、粒子散乱の位相ズレが寄与します。ですので、溶媒の粒子の足し合わせにならず、さらに粒子の構造情報が加わるわけです。
A.粒子の外径と内径の比が1%程度あれば可能です。それよりも薄いと剛体球と同じに見えると思います。
A.はい、表面厚さの評価は可能だと思います。ただし、粒子の外径と内径の比が1%程度必要だと思います。
A.粒子の外径と内径の比が1%程度であることと、コア粒子の大きさが100nm程度であること、より小さい粒子に関しては高い周波数で高濃度で測定することが必要だと思いますが、原理的には1nm程度でも言い方によっては解析可能と考えられます。例えば、ファインバブルの表面の分子吸着(ナノメートル以下)を振動エネルギーの違いから解析できています。
A.種類はなんでも可能です。粒径分布、弾性率、密度がパラメータであるため、少しでも多くが既知であることが望ましいです。
A.剛体球の吸収測定は市販品がありますが、コアシェルは当研究でのみ可能です。動的超音波散乱法も当研究のみの技術です。
● 「コロイド粒子の電気泳動と凝集速度を考える」小林 幹佳先生
A.電解質濃度として含まれます。
また、表面の電荷量を変化させます。
これらは、静電斥力を変化させます。
● 「深海極限環境にヒントを得たボトムアップのナノ乳化プロセス」出口 茂先生
A.油と同様、高温での熱分解・加水分解に注意を払う必要があります。
A.私の知る限り、ボトムアップ乳化の他の例はありません。
A.転相乳化に代表される相転移を利用した乳化は当然ながら油/水/活性剤混合系の相挙動に依存するため、使用可能な活性剤の種類や系の組成が制限されてしまいます。MAGIQでは油水溶液の相分離を利用して油滴を生成するため、利用可能な活性剤の種類や濃度に制限はありません。
A.高温での熱分解や加水分解を抑制できるのであれば、原理的には可能です。
A.MAGIQによる乳化では、まず油水溶液が相分離する課程で極めて微細な1次油滴が形成されます。これらの1次油滴は極めて不安定で、速やかに合一して大きな油滴へと成長するのですが、同時に油滴表面に界面活性剤が吸着し安定化されます。つまりMAGIQで生成される油滴の最終的なサイズは、油滴の合一速度と油滴表面への界面活性剤の吸着速度のバランスで決定されると考えられます。
従って油滴を大きく成長させるには、油滴表面への吸着速度が遅い界面活性剤を使用するのが最も簡単です。ただ経験上、200 nm程度の油滴であれば、使用する界面活性剤の種類や濃度を最適化しなくても、容易に調製可能です。
A.このような傾向が現れる理由は明確にはなっていないのですが、その一因として乳化剤量の増加に伴う相分離挙動の変化が考えられています。MAGIQでは、高温の油水溶液を急冷したときの相分離によって油滴が生成されます。乳化剤の添加量が増えるにつれてドデカン/水2成分系の相分離からドデカン/水/乳化剤3成分系の相分離へと挙動が変化し、それによって生成される油滴のサイズが変化するという考え方です。
A.冷却に最も大きく作用するのは、高温の油水溶液と冷たい活性剤水溶液との流量比です。
● 「酸化還元高分子によるナノメディシンの設計」長崎 幸夫先生
A.ROSの定量には様々あります。
「何個消しましたか?」と言われると答えようがありませんが、動物実験で正常のROSレベルに戻すことはできていますが、完全にゼロになることは今までの研究ではありません。
A.デメリットは新型ポリマーですので、なかなか企業が開発を請け負ってもらえないため、開発が進みません。水素水は水にほとんど溶けないので、正常な電子伝達系を破壊するまで濃度が上がりません。その意味では安全ですが、十分な効果を発揮させることも簡単ではありません。しかしプラセボ効果は期待できると思います。