● 光散乱基礎講座「静的光散乱法」寺尾 憲先生
A.これぐらい大きくなると光学顕微鏡や電子顕微鏡が適当なのではないかと思われます。少なくとも光散乱は適さないと思われます。
A.選択吸着がある場合、溶液の透析を行うことなしに正しいモル質量を求めることはできませんが、サイズだけを求めることは可能です。
A.透析が正しく行われていれば問題ないとされています。
A.溶媒を替えると通常は会合状態が変わるので、溶媒によって得られるモル質量が変わらなければ単一分子からの情報であると判断できます。
A.ガラスセルとの屈折率差が大きく界面からの反射光が大きくなること、誘電率が大きくマイクロバブルなどが表面電荷を帯び易いため安定存在することなどが難しい理由です。
A.ろ過法や遠心法などで大きな粒子を取り除いて測定することが重要です。
A.散乱強度の高い1 µm程度の粒子が酵素分解する過程を観測した結果で、粒子径の減少と共に散乱強度が減少するためです。
A.濃度勾配が生じるまでの高回転数行うのは良くないが、通常の遠心機(例えば、半径10cmのロータで10,000回転程度)であれば問題はない。
A.各論になるので系によります。様々試されるのが良いかと思います。
A.選択吸着の量を見積もることは可能です。他の手法として、透析を行い透析平衡を利用するという実験例があります。
A.様々な角度での散乱強度を測定してください。特にθ=0に近い角度での散乱強度は重要になります。
A.ろ過をしたアセトンで洗浄しています。特殊な装置になりますが、還流アセトンで洗浄する方法もあります。
A.媒体中に分散した微粒子間の相互作用に関する情報が得られます。低分子薬剤との相互作用を第二ビリアル係数から見積もるのは難しいと思われます。
A.特に決まりはありませんが、テキストの図5などを参考にしてください。
A.光散乱測定に限りませんが、超高分子量の高分子については溶液のせん断により高分子鎖の切断が起こる場合があります。また、回転半径が非常に大きい場合には、低角まで測定可能な光散乱装置が必要になります。
A.塩が必須というわけではありませんが、高分子電解質の測定の場合、第二ビリアル係数が大きすぎると無限希釈に外挿できないため、適切な量(系による)の塩を含む水を溶媒とします。条件については類似の高分子の測定例を文献から探すのが良いかと思われます。
A.装置によるため、具体的な値は書けませんが、無限希釈値が必要なのであれば、必要なS/Nが得られる範囲でできるだけ低い濃度を選択します。
A.系によりますが、一般的にはSAXS測定が有効です。。
A.各論になるので系によりますが、まずは、応用例の(2)で示した動的光散乱との併用を試してみてはいかがでしょうか。
A.一般的に困難とは思われますが、有限濃度の溶液についてはSLSより浸透圧縮率や相関長が決まるので、系の構造に関する情報は得られます。
A.DLSについては多検体ナノ粒子径測定システム nanoSAQLAの製品紹介及び測定例をご参考にされてはいかがでしょうか。A2を正確に見積もるのであれば、角度依存性の測定は必要になると思われます(系によります)。
A.粒子の形状、サイズと回転半径の関係には、紹介した教科書に詳細な記載があります。長さLの棒状粒子の<S^2>=L^2 / 12となります。L = 500 nmの場合、<S^2>^1/2 = 144 nmとなります
A.測定波長での透過率を別の方法で求めておき、測定された散乱強度の値を透過率で割ることで補正可能です。ただし、蛍光などが無いことが条件になります。
A.原則として希薄溶液(重なり濃度以下)が適用範囲です。
● 「GPC-MALSを用いた分岐性の評価」外城 稔雄先生
A.第二ビリアル係数はポリマーと溶媒の間の総合作用を表す指標です。ポリマー⇔ポリマーとポリマー⇔溶媒の相互作用がどちらが大きいかによって値が変わります。ポリマー⇔溶媒の相互作用が強い場合は正の値(良溶媒)、二つの相互作用が同じ場合は0(θ溶媒)になります。溶解性の尺度にはなるかも知れませんが、分岐性の尺度にするのは難しいと思います。
A.分岐度が条件により異なるかという質問として回答します。光散乱での測定では溶媒の効果はあまり出ませんが、固有粘度や拡散係数では流体力学的径に反映されますので全く同じにはなりませんが、概ね同じとなります。
A.オンライン式はHPLCと同様に打つだけ、バッチ式は複数濃度の試料を測定します。解析の手間は大きく変わりません。
A.主鎖がかたい場合は、広がりが大きくなります。ミミズ鎖モデルを適用することで評価可能です。
A.GPC-MALSですと30分から1時間です。バッチ式では濃度を多く振ると時間が掛かる場合があります。バッチ式は光学精製(細かいゴミの除去)を行う必要もあります。
A.難しいところですが、類似した直鎖構造の物質との比較が代替案となるかと思います。糖類であればプルランなどが良いと思います。
A.1.回転半径でも同様の相関が見られます。但し、固有粘度の単位は体積/重さで、他は長さですので、単位を合わせて比較を行う必要があります。
2.仮説になりますが、分岐が進むと重さ当たりの成分量が増加する点が重要ではないかと思います。リニアな状態では密度は低いです。
A.回転半径はz平均です。大きな分子サイズを分離できるカラムを使用していますのでサイズ分離しています。
A.分岐性が高いものは粘度が低くなります。相互作用は大きい可能性は高いと考えていますがエビデンスはありません。
A.反応条件は製品情報に該当しますのでお答え出来ません。分岐構造はランダムで鎖長に分布のあるものと推測していますが、確認は出来ていません。
A.GPC-MALSを用いれば評価可能です。バッチ式の場合は、平均分子量が異なるものを複数準備して広がりの分子量依存性を評価する必要があります。オンライン方式であれば分布の各成分に対して分子量と広がりの情報が得られるために、1試料で分子量依存性の情報が得られます。但し、回転半径は分子量が低い場合は評価できない事が多いので、オンライン固有粘度計やQELSを併用した方が良いことがあります。
● 「マイクロレオロジーの基礎と応用」井上 正志先生
A.DLSの検定にPSラテックスを使用しますので、水系であればよく一致するものと考えています。粒子系が大きくなると凝集等が生じやすいものと思います。また、ゆっくり動いているものの方が測定はし易いので、粘度を上げると良いかもしれません。
A.液体の場合には、Stokesの式でよいと考えれていて、あまり難しいことを考えなくてよいと思いますが、粘弾性体かつ過渡的な流れの球の摩擦係数に関しては、正直なところよくわかりません。おっしゃるような、もう少し複雑な取り扱いが必要かもしれません。(誘電緩和でもちいた)一般化Langevin方程式では、回転の粘性摩擦として取り扱っていますので、伸張運動まで考慮しなくても良いかと思います。しかし、棒状分子の運動としては回転運動と並進運動として両方解くのがより良いですが、かなり複雑になります。
(木村先生より補足)複屈折を持つ球状粒子を作製すると、クロスニコル測定により回転運動と並進運動を両方測定することも可能です。
A.1.ドイツのメーカのNovocontrolや、昔のHP(現行Keysight)を使っています。キャリブレーションをしっかり行えば、どこのメーカーでもあまり問題ないと思います。
2.試料サイズは10円玉より大きい程度、厚みは数百µmです。プローブ濃度は前半のPSラテックスの濃度は低いです、後半の液晶分子を入れて誘電測定したものは数%入っています。
3.通常は回転緩和時間が用いられます。しかし、回転緩和時間は粘度と弾性の比で表されますが、ガラスの場合の粘度とは何なのか?と議論が難しいところです。
A.はい、大きい粒子は超音波処理などして測定していますが、結果が合わない場合も多いです。
(則末先生より補足)平均二乗変位を測定する際に、沈降速度のゆらぎが影響する可能性も考えられます。
A.特に高周波領域、水系の試料を機械式レオメータで測定することはほとんど不可能であるので、光散乱法の優位性があるかと思います。
また、工業製品生産時にキャストする前の溶液の粘弾性を評価することにも意味があるかと思います。
A.(クリープ)コンプラアインスは、クリープ測定で求められる粘弾性関数です。
A.通常の液体は非圧縮性とみなして問題ないと思います。プローブに対して媒体の構造を考えなくよい場合には連続体として考えることができます。一方、からみ合い高分子溶液などでは、小さいプローブを用いるとからみ合い網目と大きさがかわらなくなると、媒体は不均質で連続体をみなせなくなります。
A.今回ご紹介した誘電緩和を用いて方法では、プローブとして液晶を用いています。通常の試薬メーカーから手にいれることができます。
● 「X線小角散乱を用いた水溶液中のナノ粒子の構造解析」櫻井 和朗先生
A.鎖の角度はゆらいでいるので分からないと思います。高分子ミセルでは分布が広いモデルを使わないと合わないので、それを分散と言えるかもしれません。
A.光散乱では回転半径と絶対分子量が求まりますが、SAXSから求まる分子量は必ずしも絶対分子量ではありません。一方、SAXSは非常に大きなqまで測定できるので、ミセルの内部構造まで分かる点が強みです。
A.PEGの分岐鎖については詳しくありませんがその可能性はあります。
A.逆ミセルでもPlatonic micelleの例はあります。しかし、会合数が30や31となると現在の手法では判別が出来ません。
A.原理的には多層モデルを用いることで可能ですが、パラメータが多いと唯一の解を求めることが難しいです。
まずは2層のモデルでフィッティングし、合わない場合には3層にするなどの手順をお勧めします。
また、散乱で分布が見られない場合には、ミセルの断面の電子密度のプロファイルを逆フーリエ変換で求めることができます。
A.FFFの測定を始めるまえに、半透膜上に試料を集める操作(focusing)があります。この操作で半透膜に試料が吸着したり、会合数が変わったりする場合は測定できません。これは試料によります。
A.ミセルの形成は簡単には疎水性の蛍光プローブを用いて確認できます。サイズに関しては説明をしました。資料をみてください
A.ミセルの形成は簡単には疎水性の蛍光プローブを用いて確認できます。
A.GIFTでは、散乱体における分布を考慮しておりません。また、デカップリング近似が使えない場合でもむりやり計算をしており、信用できないと思います。
● 光散乱全般 世話人会
A.いいえ。溶液中でポリマーが完全に溶解していると、溶媒を含めた糸まり状(ランダムコイル)の分子鎖形態をしていることが多いです。SLSでは糸まりの回転半径が、DLSでは糸まりの流体力学的半径が出ます。ざっくり言えばどちらも分子サイズです。ぎっしり詰まった粒子の場合も、もちろん粒子サイズが出ます。粒子が半溶解している場合は膨潤したサイズが出ると考えられます。
A.精度には影響しませんが、角度依存性が強い試料の場合、十分な角度点数がないと角度0に正確に外挿できなくなります。
A.エマルション中に含まれる高分子が複数の場合、エマルションのまま分子量を測定するのは難しいと思われます.高分子が分子分散する溶媒に分散させれば、静的光散乱法により分子量を評価可能になります。
A.沈降すると運動を加速させるので、拡散係数が大きな小さな粒子と誤評価されます。拘束されると運動を低下させるので、拡散係数が小さな大きな粒子と誤評価されます。粒子サイズがミクロンサイズと大きくなると沈降の影響が現れますが、DLSは光の散乱ですので、光の波長程度では沈降による影響よりも拡散の影響の方が大きいため、あまり大きな問題にはなりません。ただし、低角度ほど大きなスケールで解析することになるので密度が非常に大きな散乱体では少しだけ影響が現れるかもしれません。問題ではないと思いますが、あるならば広角度側ほど取り除けると思います。壁面への拘束は拡散係数を低下させますが、壁の付近だけを検出できるエバネッセントDLSもしくは低コヒーレンスDLSでないとその効果は検出できないと思います。ですので、一般的にその効果は問題にならないと思われます。
A.低コヒーレンス動的光散乱法を使うと比較的濃度の高い試料の測定が可能です。動的超音波散乱法を使うと濃度無制限で粒子径を算出できるかもしれません。ただし小さい粒子の感度は光散乱法の方が良いです。