● 光散乱基礎講座「静的光散乱法」寺尾 憲 先生
A.式を取り扱いやすくするために、定義的に用いられています。
A.過去に分子量6,000万のポリスチレンを測定した例があります。
但し、極低角度(~5度)を精度良く測定できる装置が必要です。
A.分子量6,000万のポリスチレンはマグネチックスターラーによる攪拌などにより容易に切断されるので、溶解にも注意が必要です。
A.資料の式20をご覧ください。角度ゼロの測定は実際には不可能です。一般的には角度15度程度が限界です。
A.平均2乗回転半径が分子量の2倍に比例する時は棒状、分子量の1.2倍に比例する時には良く溶解したランダムコイルです。
A.Z平均と名称付けたもので、装置とは関係ありません(詳細は教科書を参照ください)。
A.データのばらつきは試料が低濃度で顕著になる場合が多いと思います。どの程度が許容されるかは、測定の目的によります。
A.冷却遠心機を用いて、20000 Gから30000 Gで1から4時間程度の遠心処理をしています。
A.波長が違います。絶対強度を測定するのには光散乱が有利です。但し、サイズの決定には10 nm以上の大きさが必要です。それ以下の大きさにはX線散乱が適しています。局所的な構造の測定にもX線が有効です。
A.蛍光カットフィルターを用いるとある程度の改善が見込めます。
A.測定自体には問題ないと思いますが、試料の構造や物性には影響する可能性があります。
A.低角度での測定では、大粒子の散乱が強調される点に注意が必要です。
A.有限濃度の散乱挙動を理論的に計算可能なので、計算結果との比較議論は可能です。
有効かどうかはケース・バイ・ケースです。
A.フィルターは試料の大きさに応じて使い分ける必要があり、カラムも適したものを見つけなければなりません。特に、棒状分子にはとてもサイズが大きいものがあります。
A.それぞれの部分の散乱のコントラストを考慮し、動的散乱測定からの大きさも合わせることで,ある程度見積もることは出来ると思います。
A.単純な光散乱データからは難しいと思います。SEC等との組み合わせが必要だと思います。
A.基本的には可能だと思います。データ解釈を考慮しなければなりません。
A.ごく簡単に申し上げますと、形状因子(1粒子のかたち)、構造因子(多粒子の分散状態または空間配置)、浸透圧縮率(濃度揺らぎ)となります。
A.多くの場合、散乱強度/濃度の大小関係は散乱角度によりませんので、引力的か斥力的かはある程度判断可能です。浸透圧縮率を高分子溶液で測定した実験は多くあります。
A.吸着性高分子の測定は可能です。ただし、溶解性の低い高分子の測定は、溶液の光学精製の成否次第です。DLSによる粒径分布の精度は、相関関数の測定精度によります。ただし、一般的に理想的な条件のSECの分解能は期待できません。
● 「放射光X線を用いた水溶液中の高分子ミセルの構造解析」秋葉 勇先生
A.例えば、50 nmと55 nmを区別するとなると難しい場合があると思います。数分布を算出する場合にも、大粒子による影響を大きく受けるため注意が必要です。
A.一般的な放射光のSAXSで測定可能です。ご相談頂ければ協力することは可能です。偏光電磁石を用いた装置であれば波長変更が容易なので、より良いかと思います。
A.ルビジウムやセシウムを用いることがあります。また、金なども用います。低元素はまだ難しく、将来的にはS(硫黄)ぐらいまで行いたいです。
A.研究レベルで細胞導入効率が上がるとの報告はありますが、まだ実用化段階ではありません。
A.難しいとは思いますが、何とか可能な大きさではないかと思います。
A.3つ上の回答と同じですが、ルビジウムやセシウムを用いることがあります。また、金なども用います。低元素はまだ難しく、将来的にはS(硫黄)ぐらいまで行いたいです。
A.シンクロトロンを利用できる時間に限りがありますので、予備実験をラボ機で行っておくのが良いと思います。
A.分子構造と密度がわかれば電子密度(単位体積当たりの電子数)を見積もることができます。溶媒や疎水性のコアについてはこの方法で見積もった値を使って問題ないと思います。シェル層については溶媒とシェルを構成する成分の電子密度差の間になりますので、この範囲でアジャスタブルパラメータとして使えばよいと思います。
A.はい。プロファイルを見てある程度の予想を立てます。
A.吸収が強いためです。SAXSはなるべく長い波長を用いたいが、吸収とのトレードオフの関係にあります。
A.高分子ミセルは溶媒置換⇒透析で作ります。キャラクタリゼーションはFFF-MALSなどを用いて行います。会合数や回転半径の分布はこれでわかります。出来損ないというのがよくわからないのですが、ミセルはユニマーとミセルの平衡にあるので、常に出来損ないというかミセルに参加していないユニマーは濃度によって一定量存在します。これらの散乱への寄与はほとんどないので、あまり問題視していません。
確かに意図通りにミセル内に薬物を分布させることは難しいと思いますが、分子間の相互作用、極性によって系統的に分布の仕方が変わるというのは材料設計の一つの指標になると思います。薬剤を含んだミセルの内部の状態を見る方法がないので異常散乱法を使っています。用いた薬剤はほとんど水には溶けないものであり、ブロック共重合体と合わせると均一に溶解し、吸収スペクトルからも溶液中に入れた全量の有機化合物が溶けていることはわかります。これらの結果は、低分子の有機化合物がミセルの内部にあることを示しています。
● 「ナノ構造体を用いたナノ物質光マニピュレーション法の開発」東海林 竜也先生
A.事前にラマンスペクトルの検量線の外挿から推定しています。
A.文献的には100 µmの報告があります(例: DOI:10.1021/la1010067)。媒質(例:水)よりも捕捉ターゲットの屈折率が大きいほど捕捉力が強くなります。µmオーダーサイズの金粒子は直接光捕捉することはできません(金表面で光が反射するため粒子を押し出す)。水中または空気中での捕捉例が多いですが、有機溶媒中でも捕捉可能です。高粘度溶液でも原理上捕捉は可能ですが、粘性抵抗が大きすぎると捕捉はできないと思います。
A.有機分子を直接捕捉した例はありません。2 nm程度のタンパク質の捕捉例はあります。
A.可能ですが、可視光を使う場合は、試料に光化学的損傷を与える可能性があります。
A.はい。画像計測から光圧の力を見積もって、拡散係数の算出にも応用が可能です。
A.PSラテックスでは形成されません。鎖状分子でも見られないので、サイズだけでなく化学物性も因子になり得ると思います。
A.光吸収に伴う温度勾配は無視できるほど小さいことを実験的に見積もっています。シリコンは熱伝導性が高いので、吸収熱が一様に拡散するためと考えられます。。
A.異方性の粒子を捕捉すると偏光面と平行に粒子が並ぶ報告例があります。分極率の異方性が反映されていると思います。
● 「光散乱法によるゲル研究の歴史と展望」柴山 充弘先生
A.「高分子溶液の変性」の意味がよくわかりませんが、「タンパク質溶液」についての質問ということなら、答えはイエスです。たとえば、Takata et al., Macromolecules, 2000, 33, 5470.
A.難しくありません。もっとも簡単な方法は、ゲル化過程の散乱強度変化を観測し続けるだけでいいです。強度が急に強くなり、激しく振動し始める点がゲル化点です。
A.サイズが一つに収束するのではなく、「運動モード」が一つになると理解すべきです。架橋前はバラバラであったクラスターのサイズが、架橋することにより、一つの運動モードにゆらぎが統一されることによります。このような例は私の知る限り、ゲル以外にはありません。
A.条件付きですが、可能です。ガラスではDLSでは相関関数が時間に依存しない「平坦」な関数となり、ゴムでは伸張相関関数型になります。Shibayama et al., Polymer, 46, 2381.
A.プローブのみに当てるのは困難です。光ピンセットを組み合わせることが出来れば可能性があります。
A.ミクロゲルでも、高濃度では位置依存性が現れます。
A.たとえば講演で紹介した顕微DLSは有望であり、市販され普及することを期待しています。さらに、その応用として、ラマン分光を可能にする顕微ラマン分光法も有望です。
A.スロープ値とフラクタル構造は関係があります。たとえば、Martin, J. E.; Wilcoxon, J. Phys. Rev. Lett. 1988, 61, 373.に議論されています。また、Takata et al., Macromolecules, 2000, 33, 5470.でも議論しています。
A.あります。もっとも単純な均一粒子分散系でも、自己相関関数はg(2)(tau)=exp(-2Dtau q^2) + 1 という形をしており、q^2、すなわち散乱角に依存します。
A.「樹脂溶液」の意味が今一つ理解できませんが、「(固体)樹脂になる前のマイクロゲル分散系」として回答します。すでに濃厚系なので、そのままでは、サイズ別に測定することは困難です。希釈すれば、動的光散乱で粒径分布測定は可能になると思います。
A.この現象は、添加剤により沈殿・凝集が起こる現象のことを指しているのではないでしょうか。そうだとすると、凝集物が沈殿する前(沈殿する過程)ならDLS解析が可能です。
A.スペックル発現の原因となる「静的不均一性(空間不均一性)」が存在しない、ためです。つまり、理想ゲルでは網目構造に欠陥、凝集部、架橋点の不均一分布などがないからです。
A.申し訳ありませんが、テキストを今一度、ご覧ください。あるいは、ご紹介した本をご覧ください。
A.AIはあらゆる分野で利用されつつあります。ゲル解析も例外ではありません。
A.ありがとうございます。また、機会があればお話させていただきます。
A.「スチレン100%初期(1)」というのは、いわゆる「初期」ではなく、すでに速いモードと遅いモードが現れている状態で、成長過程のポリスチレン単体(速いモード)と、それが集まったクラスター(遅いモード)が共存しているからです。これに対し、「ジビニルベンゼン100%」では、小さなクラスターから大きなクラスターまで自己相似的に存在しつつ成長するため、べき乗則で表される相関関数(「緩和が一段階となる散乱関数」と質問者は表記)として観測されます。
A.「架橋剤の長さ」がどのようなものを指すのか十分理解できませんが、架橋剤が長くなると、より架橋が進行すると考えられます。その場合、架橋度が高くなるので、プローブ拡散はより抑制され、ゲル網目の拡散、つまり、ゲルモードのみが強く観測されます。さらに、架橋度が高くなると、もはやゲルではなくガラスとしての振る舞いとなり、相関関数は平坦化(時間に依存しなくなる)します。
● 散乱研究会全体について
A.ご参加ありがとうございました。基礎講座は3年で1巡いたします。来年の開催方法は未定ですが、是非継続してご参加ください(現地開催でも質問票による質問を受付けています)。
A.散乱研究会としては来年(2021年)の基礎講座がDLS法を予定しています。
良い教科書としては、講談社から「光散乱法の基礎と応用」が出版されています。
事務局(大塚電子)でも、定期的にセミナーを実施しています。DLS法に関する回は、来年春頃を予定しています。