● 光散乱基礎講座「動的光散乱法」則末 智久先生
A.図を見直して気づきました。すみません、おっしゃる通りだと思います。左と中央のグラフは、当初、係数を1としてそれぞれの緩和成分をわかりやすくグラフにしたつもりでした。一方、右側のグラフは係数も含めてプロットしています。おっしゃる通り単純なプロットミスであり、統一すべきですので、訂正します。ご指摘どうもありがとうございます。
1枚目expのみ、2枚目Aexp込み
A.速い緩和が非常に早く生じ、減衰した部分が見えていないために、切片が低いように見えているためだと思われます。
また、スライド39のグラフ右の切片高さに関しては、1つ上の回答をご参照ください
A.1つ上の回答と同じですので、そちらをご参照願います
A.光散乱の実験は、入射波を取り込まない有限角度で行うので、測定に影響は与えません。
A.まず、静的散乱強度の角度(散乱ベクトル)依存性からロッドやシートなどの構造が識別できます。DLSの場合も、相関関数の縦軸は散乱強度に対応するので、ロッドの散乱関数(散乱強度)を加味した解析が行えます。また、DLSの相関関数の緩和時間から拡散係数を求め、機械的に「流体力学的な半径であるRh」に換算します。回転平均などを考慮した独自のロッドの理論を使って、更なる解析を行うことになると思います。ちなみに、静的光散乱法による散乱強度と動的光散乱法による拡散係数はある関係(逆数の関係)があるので、それぞれ角度依存性が特徴的ですので、照らし合わせて解析すると良いと思います。
A.おっしゃる通りですね。大きい粒子の数がよほど少なくない限り、大きい粒子成分の減衰速度が求まってしまいます。これは、(少量の凝集体解析のように)大きい粒子の強度が少量でも精度良く測定できる意味では利点です。ところが、大きい粒子がよほど少なくない限り、小さい粒子中心の解析では厄介な問題と言えるでしょう。粒径分布の解析は、内訳として散乱強度の6乗重みを考慮して解析するので、適切に処理はされますが、出力される結果の精度についてはこのことを理解しておくことは大切だと思います。ちなみに、速い緩和が見える領域に重み付けを行うのも手だと思います。
A.連続相が水ではなく、粒子分散液の場合、その「溶液」を「溶媒とみたてる」解析方法もあります。講義でも解説したように、本来は、粒子濃度依存性を測定して濃度ゼロへ外挿すべきですが、ミセルの解析など操作上希釈操作が不可能な場合もあると思います。ですので、その辺りは実験的に挑戦して検証するのも大切な一歩かと思います。
A.はい、測定時間に時間がかかるだけで、可能だと思います。粘度が光散乱強度に直接大きく影響することはありません。問題となるのは相関関数の緩和時間が非常に長くなり、その緩和を十分に観測できるかどうかということでしょうか。1mPa·s程度なら数ms程度の緩和カーブを例えば5分ほど計測して積算すると思います。100 mPa·sは単純に測定時間をその100倍にすれば取得できますので、もち時間との兼ね合いでしょうか。また、単純に早く測定を完了したいなら、波長の短いレーザーを使い、散乱角度を大きくとれば散乱ベクトルは2乗で大きくなり(1/τ=Γ=Dq^2:狭い空間を探査するので)、ある程度短縮可能です。
A.はい、金属でなくても散乱します。波長(エネルギー)の観点で、束縛を受けていない荷電粒子の状態を相対的にみた場合に、自由な電子の散乱が生ずることをさします(トムソン散乱)。
A.一般的には、電荷を持たない剛体球であれば、濃度依存性はあまりみられないと思います。微粒子の内部構造や、表面状態によっては、顕著な濃度依存性が現れる可能性が高いので、確かめられることをオススメいたします。例えば、直径100 nm程度から重要になる研究例があります。
A.ゲルの測定のことでしょうか?「時間平均」のg(1)(τ=0)が1よりも小さい値がほとんどであるなら、おっしゃる通り、固体的と言えます。架橋点は動きにくいので、相関関数が1から変化しないイメージは正しいです。しかし実際の問題は、そのイメージに対応した、試料空間全体が測定されているかです。測定されたのは、空間平均ではなく、時間平均された「ある場所の」相関関数だと思います。その場合、一部だけをみて、動ける成分と動けない成分が1より小さい係数で足し合わされた(しかも場所によって程度は異なる)関数を計測します。そのような理由上、「見かけ上」1より小さくなります。対して、そのような「時間」相関関数を様々なサンプル位置で測定して全空間を平均すると、「全空間を平均した」(アンサンブル平均 or 集合平均)相関関数が得られます。その結果、イメージ通り、固体的な性質を反映して、1から始まり(そして1に留まり)ます。
A.当たり前の回答で恐縮ですが、どちらかが正しく測定できていないということになりますが、誤評価した原因を検討してみましょうか。角度依存性や濃度依存性が正しく測定できているとして、あとは分布がある場合の解析が正しく行えているかでしょうか。なお、電荷を帯びた粒子の場合、少量の塩を添加することで、薄い濃度の解析を阻害する、強力な静電的相互作用を消す事ができます。あと、SEMやTEMと比較されてはどうでしょうか?
A.試料に当たる瞬間の散乱強度には分布があるのですが、その統計的分散(標準偏差の平方根)がg(1)(τ→0)です。装置をセットアップする段階での光学的干渉特性に影響するほか、試料の散乱強度が不十分である場合、装置の影響を受けるためだと考えられます。ゲルの場合はそれ以外の理由でg(1)(τ→0)が低下します。
A.はい、有限角度での拡散係数がゼロ角度でのそれと違うのは、粒子の「内部運動」が反映されているためだけではありません。散乱強度と見かけの拡散係数は、浸透弾性率を通じて逆数の関係で結び付けられるので、確かに大まかには散乱強度の角度依存性がDLSの減衰速度に影響します。「内部構造」を反映する粒子干渉因子だけで減衰速度の散乱角度依存性を説明できれば良いのですが、実際には単純に散乱強度と減衰速度を結びつけられない場合があります。それゆえ、歴史的には数多くの内部モードや流体力学的相互作用を加味した考察があるのでしょうか。
A.はい、その通りだと思います。球状粒子の内部構造(静的な散乱関数)、粒子表面の電荷状態、いくつか考えられる事があると思います。
A.CONTINを一番よく使いますが、CONTINに頼り切るのは危ないので、場合に応じて複数の手法を検証するというのが答えになるかと思います。繰り返しの説明になりますが、プロットの形や、縦軸の精度、「相関関数をよく分析すること」が大切かと思います。個数分布で示してD50を使うことが一般的、と申し上げたいところではありますが、アピールされたいことが最も伝わるようなパラメータで議論するのが望ましいと思います。
A.それぞれの部分の散乱のコントラストを考慮し、動的散乱測定からの大きさも合わせることで,ある程度見積もることは出来ると思います。
A.タイムコリレータが普及した現代では、一般的なDLS測定は、光子相関法の一択だと思います。しかしながら、後述する解析ができません。一方、周波数解析法は精度は悪いのですが、周波数解析法でないとできない事がありますので、その場合に周波数解析法をお使いいただけたらと思います。直進的に動く電気泳動の場合と、周波数解析でのみ分離解析できる遅いモードの粘弾性の場合が該当します。
A.ライドP13の散乱理論は、レイリーの限定された理論になります。荷電粒子の運動方程式から出発して、波長に対して小さな粒子に限定して導かれます。対して、ミー散乱の場合には、入射光と散乱光を粒子表面で連続であることを条件に散乱の係数を方程式で解きます。この長波長極限がレイリーの式と合致します。
A.1.波長以上の大きさの粒子で、Mie散乱が支配的になるものです。
2.濃度を変えた測定を行い、比較的安定した濃度範囲内で測定いただくのが良いですが、そのような濃度が全く見つからない場合には測定が難しい場合もあり得ます。また、大粒子の混在によりセルセンター合わせ(Z軸)が安定しないようであれば、測定に差し障りがなければ、大きめのフィルター(数µmぐらい)などで前もってろ過していただいても良いかもしれません。(大塚電子回答)
A.はい、大雑把に言えば不向きということになります。しかし、不向きであっても評価したい場合もあるかもしれません。その場合、フィルターは通さず、ダメ元でも実験を行ってみるのが第一だと思います。より大きなメッシュで濾過をするのも一つかと思います。解釈はそのあとでいかがでしょうか。非常に低濃度の場合には、サンプルの精製も非常に丁寧にして1粒のゴミも混入しないこと、より高い強度のレーザーを使うこと、(散乱体積が90度で最小であるため)90度以外(20度以上)の散乱角度で測定を行い強度を稼ぐことなどがあると思います。
A.リニア相関計を使用している場合、サンプリング時間の設定が長いと早い緩和成分を検出できない可能性はあります。また、使用している溶媒からの散乱光が強い場合や,溶媒と試料との屈折率差が非常に小さい場合には,溶媒からの散乱光のみが検出されている可能性があります。溶媒からの散乱光にはゆらぎ成分が含まれないため相関関数は立ち上がりません。サンプリング時間としては例えば、4µsecで256チャンネルなどが考えられます。この場合、シャッター(NDフィルター)の設定値を大きく(50%)して、散乱強度ももう少し強くしていただいても問題ありません。なお,サンプルの詳細が不明ですが、それでも測定されない場合、濃度が薄すぎることも考えられます。(大塚電子回答)
A.経験式であるため物理的意味はありません。平均緩和時間は算出可能です。分布が広い場合には1より必ず小さくなりますが、実は1より大きい緩和モードがあります。DLSでそれを捉えることは非常に難しいですが、より大きな空間スケールでは大きな粒子で2(ガウス型の流体力学的速度揺らぎ)になります。
A.高分子試料の場合、2分子の相互作用を表す第2ビリアル係数、分子の摩擦係数の濃度の影響、分子の体積の3つの変化が影響するので、濃度が異なると拡散係数が異なります。この濃度効果は、光学測定に対する効果(DLSに独特の効果)です。なお、2分子の相互作用は分子によって異なるので、拡散係数に対するその効果はDLSとは無関係に存在します。
A.拡散係数が大きくなるのは、一言で言えば、拡散係数と逆数の関係にある散乱強度が干渉で小さくなるためです。静的散乱の話になりますが、均一な物質では散乱は生じず、(連続相の中に球体が存在するなど)不均一な場合に散乱が生じます。ブラウン運動の激しさに対応して散乱強度の平均値が大きくなりますが、そのとき揺らぎも大きくなります(揺らぎの理論)。揺らぎが大きい試料は、圧縮しやすいです。よって、圧縮のしやすさ(専門的には浸透圧縮率)が大きい場合、散乱強度は大きくなります。浸透圧縮率の逆数は、圧縮変形のしにくさを表し、浸透弾性率と言います。拡散係数は、濃度差で浸透圧が大きくなるほど大きいので、浸透弾性率に比例します。以上のように広角では散乱強度が干渉で低下し、拡散係数で増加します。この対応関係が一義でない場合には、内部の運動性などと関与しているのかもしれません。濃度依存性については、1つ上の回答をご参照ください。3つの係数によって大きくも、小さくもなります。
A.粒のサイズは数百nm程度はあると考えられており、その意味ではDLSではその粒の内部の状態を見ています。つまり、広い意味でネットワークです。サイズの効果そのものはゲル化点近傍まで濃度を下げないと検出されないと思います。ただし、ミクロゲルは空間的に不均一に分しており、かつ全体的なネットワーク形成で「その」構造が凍結されているために現れた性質であると考えています。なお、意図的にDLSで検出できる微粒子をネットワークに封止された場合、両方散乱すると思われます。
● 「動的光散乱法による高分子ゲルの協同拡散係数の解析」酒井 崇匡先生
A.水系だと見えますが、Acetonitrileの系ではほとんど見えません。
A.高分子量のものが少量でも混入すると、C*が下がるため、高分子量のものの影響が大きいです。
A.PEG gelでは元々の不均一性が影響しているものと考えます.ゲル化過程自体でも、不均一性は形成され得ます。
A.今回はゲル微粒子ではなく、バルクのゲルで実験を行っています。今回議論しているのは、ゲルの網目の拡散係数で、理論的にはゲルの膨潤速度を支配する拡散係数になります。今回の実験で、確かにゲルの網目の拡散係数がゲルの膨潤速度を支配していることが明らかになりました。
● 「精密ラジカル重合を用いた刺激応答性架橋高分子の設計」伊田 翔平先生
A.疎水性モノマーを使う場合では、モノマー等がすべて可溶なMethanolやDMF中でゲルを作製しますので、網目中ではある程度均一に分散していると考えています。なおその後、水に置換する際に疎水性リッチであればある程、置換時に白濁しますので、凝集が起こっていると考えられます。
A.濃度そのものは変化しません。しかしながら、弾性率は変化しています。その理由としては、冷却状態では間を繋ぐポリマー鎖はたわんでいますが、加熱状態では引っ張られた状態になっており弾性率が上昇していると考えています。
A.1段階目の重合後に精製し2段階目の重合を行っていますので、配列のゆらぎはないものと考えています。なお、精製せずにモノマー添加により2段階目を連続的に行うブロック重合法では、1段階目の残存モノマーの影響でつなぎ目部分がある程度ランダムになります。
A.物理架橋は高温では保持されますが。室温まで戻すと架橋は外れます。高温状態では化学架橋がない状態と同一です。
A.伸張により弾性率が上昇します.また、ミクロゲル部分が収縮すると堅いフィラーに多数(数十本程度と見積もり)の網目鎖が繋がった多官能架橋点となります。そのとき、多少網目鎖が破断したとしても、残りの鎖で全体の形状を維持でき、破断までに必要なエネルギーが大きくなっていると考えています。
A.おっしゃるとおり内部濃度の影響は大きいと思います。特に末端のベンゼン環が水中で外向きにはなっているとは考えにくく、巻き込むことでさらに高密度化し、立体反発のような効果を与えていると考えています。
● 「動的光散乱法のステイト・オブ・ザ・アート」岩井 俊昭先生
近日掲載予定です。しばらくお待ちください。