プログラム

■ 第17回散乱研究会(2005年11月)

※研究会開催当時の所属を記載
  散乱基礎講座「静的光散乱法 -その基礎と応用-」
講師:佐藤 尚弘 先生 (大阪大学)
光散乱法は、高分子やコロイドを含む系のナノメートルからサブミクロンスケールの構造を知る上で、非常に有力な手法である。赤外吸収、ラマン分光、X線回折法、NMRよりも大きいスケール、光学顕微鏡よりも小さいスケールを守備範囲としている。最近進歩の著しいプローブ顕微鏡法と同程度のスケールを研究対象としているが、見たい対象物を基板に吸着させる必要がなく、その場観察できる点が光散乱法の利点である。プローブ顕微鏡法と並んで、現在注目を集めているナノテクノロジーの基盤技術のひとつに数えられるべき実験法である。
 本講演では、静的光散乱実験の入門編として、その原理、実験方法、データ解析法の基礎、および応用例について述べる。初心者にも理解できるように、数式をできる限り少なくし、また必要な基礎的概念はできるだけ分かりやすく説明する。
  ポリマクロモノマーの光および小角X線散乱測定
講師:中村 洋 先生 (京都大学)
非常に高密度の側鎖を持つ櫛型高分子であるポリマクロモノマーは溶液中で太い半屈曲性鎖として振舞う。光および小角X線散乱測定を用いて行った溶液中のポリマクロモノマーの分子構造研究について述べる。
  動的および電気泳動光散乱による濃厚系試料のゼータ電位・粒径測定
講師:筒井 和典 (大塚電子株式会社)
近年、我々は、動的(電気泳動)光散乱法を用いて、希薄から高濃度の溶液までのゼータ電位、及び粒径測定が可能な装置開発に成功した。本講演では、新しい散乱測定技術とその応用例について紹介する。
  ナノゲル工学による新規ヒドロゲルの設計と機能解析
講師:秋吉 一成 先生 (東京医科歯科大学)
会合性高分子の自己組織化により、ナノサイズのゲル(ナノゲル)からマクロなゲルまで様々な刺激応答性物理架橋ゲルが得られる。これらのゲルのキャラクタリゼーションと機能特性評価、さらにバイオマテリアル応用について紹介する。
  流動場での高分子ブレンド、高分子溶液の構造形成
 ~非平衡開放系の散逸構造形成の一例として~
講師:橋本 竹治 先生 (京都大学)
自然の造形は、非線形・非平衡現象の賜物といっても過言ではない。我々が今日享受している製品・商品もまた非線形・非平衡過程を通して製造されたものに他ならない。然し、今日我々は、この現象を一体全体本当に理解しているのであろうか。本講演では、ズリ流動場の中におかれた2成分分子系の分子集合構造(散逸構造)や1相→2相および2相→1相 相転移を光散乱、光学顕微鏡、ズリ応力・法線応力を同時に測定して解析した結果について解説する。
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